herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.15

ローズ、収穫の季節


 「ローズ・ド・メ」「五月バラ」の名もあるように、5月から6月はバラの最盛期にあたり、 庭園やバラ園、お庭のバラ、あちらこちらで咲き始め、巷はバラの話題にあふれていることでしょう。精油を採るためのダマスクローズの開花もちょうど同じ頃です。ブルガリア、バラの谷では、最高級の香りを生み出すブルガリアンローズの収穫が始まります。この時期バラの谷は、シャワーのような雨がよく降ります。この雨のうるおいがバラの蕾を育み、芳しい香りに影響するといいます。たとえば、夜半から明け方まで降り続いた雨がやっと上がったような朝、畑に集まった摘み採り人たちはオーナーの返事を待ちます。この状態で摘みとりを始めてよいかの確認です。バラにとって水は必須なものですが、少なすぎても多すぎてもいけません。花に水分が多すぎるのも精油の香りや採油量に影響します。そのため、天候に応じ、収穫も慎重に行われます。

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 午前6時半、管理者の指令がおりると、収穫が始まります。ひとつずつ手で摘み、エプロンのように下げた大きな袋に集めます。1人が1度に摘む重量が約15~20㎏。袋が一杯になると集計小屋へ運び、計量を受けます。そこにはガードマンまで付き添うほどの厳重ぶりです。摘んだ量にあわせ、農夫には工賃が払われます。高価なバラの精油を採るにも、原料となる花がなければはじまりません。花の収穫は年に1度、5月中旬頃からの約3週間です。よい精油を作るためには、まずよい花を確保せねばなりません。その意味で、花が集まる集計所は緊張感が漂います。


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 バラを待ち受ける蒸留所では、運ばれてきた花を次々に手早く釜に投げ込み、水を投入、いよいよ蒸留開始です。摘んだ花をいかに早く蒸留するか、それも香りに影響します。蒸留作業は熱気に溢れます。熱せられ、水蒸気と共に立ちのぼるバラの芳香成分は、冷却され、30分後、液体になって勢いよく流れ出します。

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 ブルガリアでは採油率を高めるため、コホベーション(再蒸留)という工程が行なわれます。最初の蒸留で得た精油とローズウォーターを再度蒸留する方法です。結果、蒸留水に溶け込む精油を最大限採油が可能となり、バラの香気は最大限に生かされるのです。3トンの花から精油が採れる量はわずか1kg。金よりも高額なバラの精油です。

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 冬、寒すぎず、夏、暑すぎず、穏やかな湿り気、バラの谷の気候はバラの生育にとても適し、また、歴史の中で培われた蒸留技術、330年を越える蒸留の伝統の中で育まれたバラへの愛情、すべてがあいまって、最高級といわれるローズ精油が誕生します。


日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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