herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.9

ケモタイプ精油とローズマリー・カンファー

 「香りで脳が若返る」と2月にテレビで放映され、大反響を呼んだことはご存知でしょうか?昼と夜、それぞれに適した香りを嗅ぐだけで、物忘れが劇的に改善したというものです。鳥取大学部教授で日本認知症予防学会理事長の浦上克哉先生の研究と認知症予防、認知症治療の啓発活動が紹介されました。

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 海馬(=記憶の貯金箱)が萎縮して起きる病気、穏やかにゆっくりと進行する「物忘れ」の病気が、認知症です。浦上先生は「物忘れが始まる前に嗅覚が麻痺してくる」、すなわち「海馬」より先に嗅覚機能が低下するのでは?ということに気づき、嗅覚の刺激で認知症の症状を改善することに思い至ったそうです。海馬の神経細胞が死んでいって記憶障害へと進行する前に、脳の嗅神経が障害を受けます。しかし、嗅神経は高い再生力を持つため、刺激することで再生が可能です。その刺激は嗅神経と直結する海馬にも届き、神経細胞の働きを回復する可能性があると考えました。認知症の中でも「アルツハイマー型」に対応しますが、嗅神経を刺激するのに効果的な方法、それがまさにアロマテラピーです。

ローズマリー

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 どの精油でも効果があるわけではなく、研究の結果、先生は効果的な香りを発見します。昼間は脳を活発にするために交感神経を刺激するローズマリー・カンファーとレモン、夜はよく眠れるよう副交感神経を刺激するラベンダーとスイートオレンジのブレンドです。昼夜使い分けることで脳の働きにメリハリを与え、効果を高めます。適度な緊張感とゆったりした休養、昼間は脳を活発に動かし、夜はゆっくり休ませる、生活リズムを整えることが、特に予防に重要なそうです。また、リズムを整えるという意味では、認知症のみならず、心身の健康管理にとても役立つのではないでしょうか。

レモン

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 ここで登場するローズマリー・カンファーは、ローズマリー精油のケモタイプ。ケモタイプとは、植物学的に同系、同種でありながら、精油の成分構成が顕著に異なるものを言います。同じ学名の植物でも生育環境の違いなどにより、含まれる芳香成分に差が生じ、含有する精油成分が極端に異なるものがケモタイプとして分類されています。ケモタイプを持つ精油の代表がバジル、ローズマリーです。Rosmarinus officinalisの精油には、ボルネオール、カンファー、シネオール、ベルベノンの4つのケモタイプがあります。シネオールは呼吸器系の不調によく、ベルベノンはスキンケア、カンファーは筋肉痛の改善と、目的によって使い分けることが出来ます。同じローズマリー精油でも効能に違いがあるため、特に医療分野ではケモタイプが注目されます。産地で見ると、チュニジア産はシネオール成分が多く、スペイン産はカンファー、フランス産は他と比べるとボルネオールが2倍、ベルベノンが3倍含まれます。当然、香りも異なります。ケモタイプを知ることで、精油のより深い活用が可能になることでしょう。今後が期待されます。



日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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