herb& aroma mail magazine

ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.7

ミカンの花咲く季節

 5月、新緑の爽やかな季節、花を咲かせるのが柑橘類です。柑橘といえば多くは果実の生産のために栽培され、日本では山肌を彩る畑を全国各地に見かけます。私の住む神奈川県では、小田原周辺が産地ですが、5月の中~下旬にはミカンの花の芳醇な香りであふれます。

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 オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット等々、果皮から精油が採れる柑橘は、共通して花もよい香りを持ちます。もちろん、目的は蜜蜂を呼ぶため(虫媒花)だと思いますが、中でも最も香りがよいのがビターオレンジの花で、花を水蒸気蒸留にかけて抽出した精油は「ネロリ」とよばれ、アロマテラピーで使われるのはもちろん、天然香料としても人気です。

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 スィートオレンジ精油には、気分をリラックスさせ、眠りを誘う効果があります。親しみのある香りなので、子供からお年寄りまで抵抗無く楽しめます。ティッシュペーパーに1,2滴精油をしみ込ませ、枕元に置きます。気分を明るくする効果もあるので、気分がしずんだ日におすすめです。小さじ1杯の蜂蜜に精油を5滴混ぜ、お風呂のお湯に入れてゆっくりあたたまるのもよいでしょう。
 オレンジだけでは物足りないという方は、ラベンダー、スィートマジョラム、イランイラン、サンダルウッドなどの精油と合計が5滴になるようにブレンドします。 ハーブであれば、ジャーマンカモマイル、リンデン、ホップ、ラベンダーなどのハーブを袋に入れて浴槽に入れます。リンデンやカモマイルはスキンケア効果もあり、保湿効果が期待できます。

ネロリの収穫 ▲ネロリの収穫 ネロリ花 ▲ネロリの花

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 最も香りがよいと評価されるネロリ精油は、チュニジア産です。チュニジア共和国は、北西アフリカの3国、モロッコ、アルジェリア、チュニジアを総称して「マグレブ(陽の沈むところ)」とよびますが、その東の端に位置します。

 国土は約16万平方㎞、北は地中海、南はサハラ砂漠に臨み、気候も地中海性、大陸性、砂漠性と大きく3つに分かれます。北部に位置する首都チュニスは、日本の仙台市とほぼ同緯度です。

 紀元前9世紀、フェニキア人によってこの地に建国されたカルタゴは、伝説の英雄ハンニバル将軍を生み出し、優れた航海術と「ローマの穀倉庫」ともよばれる北部の肥沃な大地が、周囲の大国を魅了し、多彩な支配を受けてきました。結果として、ベルベル(アフリカ)人、アラブ人の文化にヨーロッパのエッセンスが加わった多彩な文化が育まれ、エキゾチックな魅力は現代の私たちの心をそそります。

 穀倉庫の名のとおり、オリーブ、ブドウ、ナツメヤシ、そしてオレンジの栽培が盛んで、良質のワインやオリーブオイルが世界中に輸出されています。中でもビターオレンジは果実のみならず、香り高い花を咲かせ、チュニジアの春を彩ります。他にもジャスミン、ゼラニウム、ローズ、ミント、ミモザなどの芳香植物が豊富で、香り豊かに暮らす人々の生活があります。精油が生産されるだけでなく、芳香蒸留水が食品などにも利用されています。

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 ビターオレンジが生産されるのは、地中海沿岸のチュニジア北部にあたりますが、温暖な気候のため、花が咲くのは例年4月初旬です。

 早朝から昼前までに花を収穫し、蒸留所へと運び、採油されます。毎朝、摘みごろの花をひとつずつ手で収穫しますが、翌朝にはもう次の花が摘み頃になるという具合で、収穫の約1週間から10日間を大忙しです。ネロリ精油はもちろんのこと、副産物として採れるオレンジフラワーウォーターも需要があり、むしろチュジア国内はこちらを目的に生産しているといってもよいくらいです。

 自然の芳香浴が楽しめる季節、どうぞ満喫してください。



日本園芸協会 指導部 佐々木薫



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佐々木 薫(ささきかおる)
プロフィール:
公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピープロフェッショナル。 NHKをはじめテレビ、ラジオの出演多数。 日本園芸協会の通信教育講座「ハーブコーディネーター養成講座」テキスト執筆者。

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日本園芸協会 学習サービス課 aroma@gardening.or.jp




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